2014/06/28

グランド・ブダペスト・ホテル

(The Grand Budapest Hotel. 2014. ドイツ・イギリス)

【あらすじ】
殺人容疑をかけられてあたふた


※ネタバレちょっとありです。


【感想】
観る前からわくわくしてたのが最後まで続きました。

途中、「ちょっとやりすぎなんじゃない...?」とあくまでシュールを貫き通す描写に圧倒されつつも、きっと監督は楽しんで撮っているんだな~と視点をちょっと変えてみたら何とも言えない幸せな気持ちになりました(何様

私はウェス監督の作品では「天才マックスの世界」がダントツに好きでなんとなく元気のないときに観るといいということを最近発見してまた近頃集中的に観ているわけなんですが、結論から言うと個人的にこの「グランド・ブダペスト・ホテル」は、「天才マックスの世界」のように何度も観たい作品ではなかったかも。

でも「監督の最高傑作」という点では異論はありません。本当に手が込んでいるし作品のあらゆる部分を切り取って額縁に収めて眺めたいし、なにより本作の語りの構造が好き。まあ、単純に言うと最高傑作が必ずしもマイベストにはならないということでしょう。ちなみに「天才マックスの世界」好きとしてはマックスを演じた彼の登場は嬉しい驚きでした(もちろん知ってはいましたが)。

【個人的注目ポイント】
1. シアーシャちゃん.......!!!
どうせまた豪華キャストなんでしょ、と最初に漫然とキャスト一覧を眺めていたときに目に飛びこんできて驚かされたのがシアーシャ・ローナン。「ビザンチウム」を観た直後だったからか、彼女にウェス・アンダーソンの世界は合うのか?なんて余計な心配を一瞬しちゃった。

シアーシャちゃんの、少し気が強そうで凛とした感じがこの作品のややゆるい雰囲気と妙に合っていて面白かったです。主人公のゼロがあまりに思わせぶりな言い方をするので、(シアーシャちゃん演じる)アガサはもしかして殺されちゃうの!?という心配を観客に植えつけた上での演出には、やられたな~と思いました。

2. ホテルの内装が
観ているときは思わなかったけれど振り返るとどことなく「アイズ・ワイド・シャット」みたいでした。ロビーが、背の高い男性が集まってちょっと薄暗くなっているところとか思いがけず素敵だったな。


あと、本作には3つの時代が登場するのですが、それによって画面のサイズが変わるという工夫がありました。観ているときはそんなサイズの変化にちょっとだけ気づいていたような気もしますが、あとから調べてびっくり。本作のそういった細部にこだわる世界観を堪能するためにも、もう一度観るのも悪くないかな。

2014/06/24

シャドー・ダンサー

(Shadow Dancer. 2012. イギリス)

【あらすじ】
IRAの戦士なのに英国のMI5のスパイになっちゃうシングルマザー

※内容や結末に関するネタバレあり

【感想】
暗い...とにかく暗い...!!

冒頭からいきなり引きこまれました。いきなり弟が死んじゃうんですもの。

IRAの活動のことはあまりよく知らなかったんですが、これが90年代の話とは...。90年代生まれなのでなんとなく震えながら、緊張しながら見入りました。

印象的だったのは、街並みとコレットの家族のシーン。

あんなに危険と隣り合わせのようでいて、でも街を出れば道路では子供たちが無邪気に遊び回っていて。不思議で信じがたいような光景でした。

(マックによれば)行きずりにコレットが寝た男との間にできた息子に、活動家の兄や弟も含め家族が惜しみなく愛情を注ぐ場面はまぶしかったです。むしろそういう複雑な事情で生まれた男の子の存在あってこそ、家族愛がうまく描かれていたのではないかな。家族愛、そして兄弟愛、大きなテーマですね。

この映画の好き嫌いが分かれるだろうと思われるのはあの衝撃のラスト。
「矛先が違わないか?」「マックは助けてくれたのになんてことを!」という意見がtwitterやブログで見たところ多かったような気もしますが、私はむしろ、「こういう終わり方もあるんだな~」と感心に似た思いで胸がいっぱいに。もちろん許されないことですけど。

まあ、血の繋がりをナメちゃいけないんだよな、と。

そもそも、マックがコレットに頼んだことは、コレットにとっては実の兄弟への裏切りでしたからね。家族が一緒にいるシーンが何度も映し出されて印象的だった分、私には(もちろん許せない行為ではあるけれど)納得できるような気がしました。母親の、電話を受けたあとの死を覚悟するシーンもよかったです。観ながら、思わずため息が。

原作があるみたいなので、機会があったら読んでみようかな。と思うくらいにははまりました。

キャストについては、マック演じるクライブ・オーウェンがとてもよく合っていました。渋くて強そうでいて、MI5の同僚たちが戸惑いを覚えるほどにコレットにのめりこんでいくどうしようもない男。ジャンルは全く違うけれど「クローサー」での彼を思い出しました。

アンドレア・ライズボロー、この人の作品はもっと観ていきたいです。彼女が本作でよく身につけていた真っ赤なコート、絶対目立ちすぎでしょ(笑)と思いながらもそのビジュアルにはうっとりしてしまいました。

【個人的注目ポイント】
1. アイルランドの鬱蒼とした風景
こういう景色がたまらなく好きなので。

2. コレットのお兄さん
一度見たときはあまり何も思わなかったし、第一印象も、コレットが冒頭で捕まったことに対し、しれっと「バカだな」みたいなことを言うのでそんなに良くなかった。けれども見ているうちに、「こんなお兄ちゃん欲しいかも」と思ったり(なんか違う


アイルランドの風景や街並みの寒そうで寂しげな雰囲気に加え、家族愛を描く映画がたまらなく好きなので、一度観ただけで気に入りました。

2014/06/06

エヴァの告白


(The Immigrant. 2013. アメリカ)

【あらすじ】
ポーランド→アメリカ
妹とは引き離され、
頼りにしていた叔母夫婦には見捨てられ、
怪しい男に助けられ娼婦になってしまったけれど、
希望は捨てない

※結末や内容に関するネタバレあり


【感想】
マリオン・コティヤール目当てに観に行ってしまいました。ホアキン・フェニックスは苦手だしジェレミー・レナーもそんなに好きなわけじゃないのに。

...と思っていたら、鑑賞後にはジェレミー・レナーに魅了されてました。相変わらずホアキン・フェニックスは苦手だけど←

ブルーノ(ホアキン)にベタ惚れされてること知ってて放置してたり、オーランド(ジェレミー)に「一緒に西部へ行こう」と言われてもあっさり「妹のそばにいたいから」と断ったり、姉妹愛もひとつの大きなテーマなのだなと感じました。そして男2人の心を奪った上で破滅させておきながら、自分は最後には妹と再会し再出発。潔い。でも嫌いじゃないです。男性から見ると複雑かもね。

ラストが印象的でした。
鏡に映る、すべてを失ったブルーノの背中/窓から見える、妹と島を出るエヴァ

【個人的注目ポイント】
本作はメインのこの3人が光りすぎててまわりの世界が本当に見えなかった。キャスティングの面でもまさかこんなメンツが揃うとは。初めて知ったときはなぜだか違和感あったけれども、素晴らしかったです。

1. ジェレミー・レナー
私これまで彼をこんなに素敵だと思ったことないです(アッサリ

それでいて、「この人本当に信用していいの?」と観客にも、そしておそらくエヴァ自身にも思わせるような、どことなく信用の置けない怪しい感じが存分に出ていて上手いなあ...と思わされました。

2. ホアキン・フェニックス
「穏やか、それでいて実はキレやすい男」がなんて似合うんだ!
声までネチネチしてました笑

3. マリオン・コティヤール、というかエヴァ
美しすぎますよ...けれどもオーランドの絵に描いたような一目惚れには思わず「こんなことあるの??」とまばたきしちゃいました。

男2人に思われても、ひたむきに妹を思うのは近頃映画でも流行りの同性愛、に似た姉妹愛でしょうか。