2014/02/27

鑑定士と顔のない依頼人



めずらしく邦題の方が好みだったのでタイトルも邦題で!

原題:The Best Offer

無料優待券をもらったので、車で片道1時間かけて行ったことのなかった劇場へと足を運んできました。

この映画のことは先日まで全く知らなかったのですが、Twitterを眺めていてよく目にとまった不思議なタイトル。感想も何やら不穏な感じで…とりあえず事前にキャストだけチェックして劇場へ。ストーリーも特に知りませんでした。

始まってみると、もうスクリーンに釘付けになってしまいました。

鑑賞の最中に、「ああ、私いま映画みててすごく幸せ」とほんのりあたたかい気持ちになった映画は初めてでした。それも何度も、そんな感情につつみこまれました。

ストーリーについては触れませんが…ちょっと我慢できなくなったので、思うところを勢いにまかせて書きたいと思います。つまり何が言いたいのかというと、ネタバレです。

(ネタバレ含みます)
(観た人にしか正直何を言ってるのかさえわからないネタバレかと思います)



この映画には完全にだまされたというか…だまされることを楽しむことのできるかなり貴重な映画なのかもしれません。この映画のことは大好きになったけれど、Blu-rayを購入しようとかはあまり考えなくなりました。初めて観たときの衝撃やそれを越えての喜びに似た感情を経験することはもう二度とできないのです。それがなんだかちょっぴり寂しいような気もします。

映画で印象的だったのは、主人公ヴァジルが頻繁に口にしていたauthenticという言葉。簡単に言うと「本物の」という意味です。何度も何度も口にしていたので、この映画のキーワードの1つなのだと思い、観たあとはそう確信しました。

クレアとの、結果的には「偽物」にすぎなかった愛ですが、それは「本物」を愛し価値を認めていたヴァジルの心に、何物にも代えがたい永遠を残していきました。終盤からうかがえる、クレアの母親ではなく実は彼女自身を描いていたという点で「偽物」である例の絵画を、ヴァジルがずっと所有している様子もそれを示唆しているようです。

また、本作はハッピーエンドでもバッドエンドでもない、でもどちらかと言えばハッピーエンドなのかな?と感じました。鑑賞する私たち他人から見れば確かにかわいそうな話ではありますが、真相をつかんだあとのヴァジルの表情は空虚なようでいてどこか恍惚としているようにも。あの人はあれはあれで幸せなのかもしれないな、とすぐに忘れ去られてしまう噂話のネタにでもなりそうなお話です。

本物の美術品と共に、最高の映画体験をすることができました。絵画好きな私には特にたまらない映画でしたよ。

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